WRITINGステップ【長編小説の書き方:執筆編】

WRITINGステップ

※ WRITINGステップの詳細コンテンツは、順次公開していきます。 公開をお待ちください (現在は、BASICステップADVANCEステップCUNNINGステップを公開中です)。

1.1WRITINGステップのはじめに

何週間、数か月と執筆作業に移った時、あなたは物語を文章に出力していく上での問題と、もう一つ、別の厄介な問題に直面する。

このステップで学ぶのは、執筆中のトラブルへの対処法について。執筆中のトラブルと、不安への対処。特に後者が強敵だ。

2.2執筆中に新しいシーンを思いついた時の対処法

構成上の問題が発生した。あなたは原稿を書いている最中、新しいシーンを思い付いたのだ! やったね! Halleluiah! どうしよう!?

どこかで見かたような展開だ。けれど、前とは事情が違う。前はカードを書くという、執筆の前段階での修正だった。今回は、すでに執筆が始まってしまっている。こんな時、どうすればいいのだろうか?

2.3余計なシーンを書きすぎてしまった際の対処法

カードを追加していくうち、シークエンス書いていくうち、そもそもカードの段階で、余計なシーンを作りすぎてしまって、物語が間延びしてしまうことも起こりうる。それを執筆の途中に気づくこともね。

一番具体的なのが原稿に書いた文章なんだから、具体的になって、新たな問題が見つかるんなんていうのは珍しいことじゃない。そういうときの対処法を知ろう。幸いなことに、その対処法は一つだ。

2.4執筆中に矛盾を見つけてしまったときの対処法

ぼくは原稿を書いている最中に、あることを盛大にやらかした。プロットポイントⅠに関わるキャラクターが、プロットポイントⅠに至るまでに、一回も出てきていなかったのである。

書いている最中に気づいたクリティカルなミス。作品の成立を左右する矛盾への対処は、必ず知っておかないといけない。でないとこの躓きが即死攻撃となって、あなたの長編小説を未完にしてしまう。

2.5プロットカードと原稿の内容がズレ始めたときの対処法

緊急警報! 緊急警報! 今度は足りないんじゃない! 書いている内容と、準備したカードがズレてきたんだ!

今度は焦りや無力感、落胆ではなく、未知への不安が、心に入ってくる。カードが敷いたルートから外れること。これは、戒律違反ではないのだろうか?

前にも言ったように、事前に準備をしてから書くことと、執筆中に変更を加えることは、対立しない。必要なのは、適切な対応方法を知っていることだ。

3.1地の文に神経質にならなくてもいい理由

会話文は得意だけれど、地の文が苦手……、という声を結構聞く。

「キャラクターは活き活きしているんだけど、地の文はどうやって書けばいいのかわからない……」と。

はっきり言うが、地の文については、気にする必要はない。美しい地の文が書けるのは凄いことだけれど、それはあくまで「プラスアルファのおまけ」と思っておくのが生産的だよ。

3.2秘密兵器、『推敲レポート』

執筆中の「このシーン、大丈夫かな?」とか、「あ、どこかでこの要素は補強しておかないといけないぞ」とか、「思い付いたシーンがあるけど、入れる場所がすぐに思い浮かばないぞ」といった懸念。

こんなものをいつまでも頭の隅に常駐させておくと、気が散って仕方がない。そういう時は、ここで紹介する秘密兵器を使って、「行動で対処」しよう。作品の質を高め、執筆をターボする優れモノだ。

3.3「インスピレーションを待つ」は最低の悪手

モチベーション関連の話になるが、ぼくが知る中で最大の、悪手中の悪手が「書くためにインスピレーションを待つ」というものである。

インスピレーションは、待っていても湧いてこない。これはぼくが語気を強めて言っているわけではなくて、ロバート・ボイスという心理学者が行った実験で証明されている。ポール・Jシルヴィアという心理学者の著書からの孫引きになってしまうけれど、紹介させてもらうよ(Silvia 2007: p. 26)。

3.4やる気が出ないときに思い出す、偉大な作家の情けない言葉

ハリウッドの最前線にいたクリエイターだって、文章を書くマシーンではなかった。彼らも、不安になり、気乗りしないと思いながら机に向かって書くことはあった。自分が書く文章が、全然良くないものだと、自覚しながら書いたこともね。

ぼくはやる気が出ないとき、そんな彼らの言葉を思い出すようにしている。それを紹介するよ。

3.5気分が乗らないときに思い出す、偉大な作家の言葉

ぶっちゃけこのテキストを書いているときでも、理由なく、書くのが億劫なことは何度かあった。書くことは決まっている。けれど、机に向かうのがただ面倒なのだ。YouTubeを見て、ゲームをして、それで一日が終わったこともあった。

情けない話、画期的なブレイクスルーなんてのはなかった。情けない話、罪悪感に駆られて、渋々書き始めたのである。けれど、それでいいのだ。ハリウッドの偉大なクリエイターも、そう言っている。

4.1「書きながら投稿」は、してはいけない

もしあなたが、「書きながら投稿する派」だったなら、一つ、厳しいことを言わないといけない。

必ず、作品を最後まで書き終わって、推敲を終えてから、WEBサイトに掲載してほしい。公募派で「推敲をしない」という人も、推敲をしてから郵便局へ行くこと。

そりゃ、自分の作品が寒空の下で凍死してもいいというのなら、別にいいけれど……。

4.2推敲という「前提」が、執筆速度を上げる

この項目では、推敲によって執筆を加速させる考え方について話すよ。

推敲というプロセスについて知ることは、執筆速度を上げることに繋がる。伸び伸びと書き、スラスラと書き、たくさん書けるようになる。これらが推敲のやり方を知る利点だ。

4.3作者にとって重要 ≠ 読者にとって重要

作者が気にしている「ここはケアしておかないと」という点と、読者が「ここがケアされてないぞ!」という点は、イコールにならない。作者が「ここを突っ込まれないように、作中でケアしておかないと」と思った部分がむしろ、「興味の無い文章を読まされている」と思われかねないのだ。

それについて、スティーヴン・キングが実際に遭遇した出来事を例に、紹介するよ。

4.4「手直しの公式」

キングがまだ十代で、落選の通知を貯めながら、ついてくる一言の寸評に大喜びしていた頃(あの大物にも、こういう時代があったのだ)、ある寸評で、キングの推敲方法は一変した。それが推敲の際の、ある公式についてだった。それを紹介しよう。

5.1秘密兵器その2:『スクラップ』のファイル

「せっかく書いた文章を消したくない」

こう思ったことはないだろうか? けれど、1段落の文章をカットするのに良心の呵責を感じたり、断末魔の叫び声を上げているようでは、神経が持たない。けど、カットはしないといけない。

そういうとき、ぼくはこの秘密兵器のファイルを活用するんだ。

5.2修整箇所 ≠ 頭痛の種

推敲レポートに書かれた、沢山の要修正点。確かに直すべきところは沢山ある。キャラクターの台詞がぎこちなかったり、地の文で微妙なところがあったり、はたまた、物語上の矛盾まである。

けれど実は、本当にまずい、物語の完結を左右するような事故というのは、殆どないのだ。不安かもしれないが、怖がることはない。むしろ、修正箇所の多さが列挙されているほど、推敲は楽になんだ。

5.3WRITINGステップのおわりに

長かったテキストも、これで終わりだ。座学と下準備、不安を振り切る術を学んで、執筆作業が始まる。ちょっと物寂しい気もするけれど、ぼくとあなたは、まだ繋がっている。書くのはこれからなのだ。