2.3余計なシーンを書きすぎてしまった際の対処法

WRITINGステップ

ぼくは前回、カードを作っているときに追加したいカードがあれば、どんどん追加すればいいと言った。

けれどカードを追加していくうち、シークエンス書いていくうち、そもそもカードの段階で、余計なシーンを作りすぎてしまって、物語が間延びしてしまうことも起こりうる。それを執筆の途中に気づくこともね。一番具体的なのが原稿に書いた文章なんだから、具体的になって、新たな問題が見つかるんなんていうのは珍しいことじゃない。

そして、そういう時の対応は決まっている。

「そのまま書き続けて、あとから削る」のだ。

特別なことではない。多めに書いて削るというのは、古今東西で通じる、創作ハウツーの一つだ。

ぼくは今までいろんな知識や手法について紹介してきたけれど、そのどれもが王道をゆくもので、奇を衒ったものではなかったはずだ。日本で中々浸透していないというだけで、三幕構成そのものは大昔からあったし、フィールドが理論化したのだって、70年代の話と言われている。

だから、「いまさら月並みなことを言い始めたぞ」とがっかりしないでもらえると、ぼくとしては気が楽かな。荷物を詰め込み過ぎたなら、本当に要る荷物を選び直すしかないんだ。

ただし、書いている最中ではないよ。これも「後から」だ。

間違っても、絶対に、なにがあっても、書いている最中に、今まで書いたシーンの取捨選択を始めてはいけない。

■この選択ミスは、致命傷になり得る

初稿を書き終えたら、直しに取り組む時間はたくさんある。けれど、書いている最中にそれをやり始めては駄目だ。今そんなことをやり始めたら、一生終わらない。

書いた部分の修正は、初稿を書き終わってからする。だから、まずは書いてしまえばいい。「後から削るかもしれないんだけど、書くべき何だろうか……?」と思ったら、取りえず書くべきだ。

これもよく言われるが、削るのは、増やすよりもずっと簡単だ。対処は難しくない。

けれど、今それを始めては駄目なのだ。「間延びしちゃってるな」とか、「余計なシーンだったな」と感じた事実は、推敲のときに使うから、きちんととっておく。それにとどめておくべきなのだ。絶対に、執筆中に見直してはいけない。

あなたはまだ、怪物に勝ったわけではないんだ。「完成させられるかな……?」と、思いながら、「完成させるぞ!」と、頑張っている段階。ふとした拍子で、「駄目だ、躓いた、この先もきっと書けないんだ……」となってしまうと、手は震え、問題を解決するのに必要な冷静さを失ってしまう。

初稿を完成させてから、冷静な気持ちで問題に取り組めばいい。対処する順番を変えるだけで、その難度も危険性も、ずっと低くなるよ。

シーンの取捨選択そのものはそう難しくないから、もうちょっと追加で安心していい。あなたには構成の手法がある。パラダイムやシーンの考え方を使えば、必要か、不必要かという判断は、つけることができるからね。

文脈やサブコンテクストに関係しないシーンは、不要なシーンだ。物語を前に進めず、人物について新たな情報を読者に見せることもしていないシーンも、不要なシーンだ。

■取り除く場所は、これまでの積み重ねが教えてくれる

あなたが「なんか、間延びしちゃったな」と思ったとき、カットするとしたらこれらに該当するシーンに、メスを入れることになるだろう。

ちょっと注意してほしいのは、これはあくまで方針でしかないことだ。サブコンテクストに無関係で、人物について新たな情報を明かすことも、物語を進めもしていない。そんなシーンがあったとして、あなたが要ると思えば、そのシーンは要るのだ。

「入れたかったから入れた」でいいのだ。評判が最悪で、あなたが「たしかに、よく考えたらいらないかも……」と思ったら、カットすればいい。

ちなみに、もしそう思わないなら、それに対する反論は「いやだ! このシーンは残す!」で構わない。「好きなシーンだからカットしたくない」という理由は、内なる自分の声や、誰かの指摘を受け入れない理由として、十分すぎるものだと思うよ。

書いたのはあなたで、誰が何を言おうと、決めるのはあなただ。カットすべきか、しないべきか。それは書き手自身しか責任を持てない選択だ。

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