4.4「手直しの公式」

WRITINGステップ

キングがまだ十代で、落選の通知を貯めながら、ついてくる一言の寸評に大喜びしていた頃(あの大物にも、こういう時代があったのだ)、ある寸評で、キングの推敲方法は一変した。その寸評は、以下のようなものであった。

「悪くはないが、冗長。もっと切りつめた方がいい。公式――二次稿=一次稿マイナス10%、成功を祈っています」

(king 2000: p. 298)

この方法を取り入れてからの変化を、キングはこう言っている。「私はこの公式を手元に合ったボール紙に書き写して、タイプライターの脇の壁に貼った。そのすぐあとから、良いことが起こり始めた。いきなり雑誌社から注文が殺到するようになったわけではない。不採用通知に添えられた、手書きの寸評の数が増えただけだ」(king 2000: p. 298)。

キング自身、「結果が出はじめたのは、公式のせいだけとは思わない」と言っている。ただし、この公式が契機となったのは確かだとも言っている。

キングは元々「増やし屋」で、第一稿が4000字なら、第二稿が5000字になるのが常だったという。けれどこの公式をきっかけに、「削り屋」に転身、4000字の第一稿を、第二稿では3600字を目標に、手を加えることにしたのだそうだ。

ちなみにぼくの場合、元々「増やし屋」の出来損ないみたいな状態で、第一稿を仕上げられずにずるずる継ぎ足していくような有様だった。今では、好きに書いて後からごっそり直すスタイルに変わったから、「削り屋」だね。

さっきも言ったように、削る方が増やすよりもずっと楽だ。楽をすることは、悪いことじゃない。余ったエネルギーを、さらに作品につぎ込むことができる。

手を抜くんじゃなくて、エネルギー効率を良くするんだ。それが結果的に、キングの状況をより良い方向に運んだのだと思うよ。

だからあなたにも、「削り屋」になることをお勧めしたい。「一律10%削れ」なんて、めちゃくちゃなことは言わない。削るべきかどうかは物語次第、文章次第だ。一概には言えない。

一概に言っていいのは、「あとから10%削るのだから、多めに書くことを自分に許そう」ということ。初稿からスレンダーな物語である必要はないんだ。伸び伸びと多めに書いて、後から削る。これであなたも、削り屋の仲間入りだ。