6.3間延びしないシーンの作り方

CARDステップ

では、シーンをどこから書けばいいのだろうか?

パラダイムをきちんと書いて、書くべきことの焦点を絞ったとはいえ、それをシーンにする段階で、だらだらと書いてしまっては、テンポを損なう。

これについても、フィールドは、わかりやすい原則を話している。

「遅く入って早く出ろ」だ。

ここは、フィールドのした、脚本家、ウィリアム・ゴールドマン(代表作:『明日に向かって撃て!』)の話を、使うのがいちばんわかりやすい。

取材記者がインタビュー取材するシーンを書くとする。まずインタビューの準備から始まり、取材現場に到着、中盤で取材相手と会って挨拶を交わし、テープレコーダーの準備をしてインタビューが始まる。最後には、インタビューを終えてお礼を言い、コートを着てドアのところまで歩いていく。その時、突然あることを思いだし、振り返って言う。「あの、最後にお聞きしたいんですが……」こうしてシーンは終わる。

この場合、どこからシーンに入り、終わるのが良いのだろうか。記者が取材場所に到着したところ? 相手に挨拶をしたところ? インタビューの途中から? 正解は、記者が最後に「あの……」という直前だ(Field 2006: p.164)。

そこから入れば、余計な部分が省けて、新情報の開示に焦点が絞れる。

シーンが間延びしていると、それだけで読者は嫌になってしまう。色々描写したいのはわかるけれど、話題一つ切り出すまでに、喫茶店の説明と風景と客層とコーヒーの味まで説明されても困るんだ。

またこれもフィールドの挙げた例だが、『マグノリア』という映画にも、良いシーンがある。

クラウディアがバーで飲んでいると、男が近づいてきて「こんばんは」と声をかける。「こんばんは」とクラウディアが答えると場面は変わってクラウディアのアパート。酔っぱらった二人は部屋に入って、ドラッグをやる。クラウディアを見て男は言う。「それで?」次の場面は、二人のセックスシーンだ。多くの部分が省かれているが、その間に何が起こったか、容易に想像できる。

省けるシーンを省き、見る者が補える範囲で見せる。そうすると、すっきりとした、かつ、贅肉の落ちたシーンになるのだ。序盤・中盤・終盤を持ちながら、省ける部分は省いてある。「遅く入って早く出ろ」を突き詰めていくと、こういう形で、間延びしがちな部分を削ぎ落すことができるのだ。

遅く入って早く出る。シーンを書く時は、この言葉を頭の隅に置いておこう。

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