2-1.「氷山の一角の下」を知らないと始まらない

BASICステップ

まずは「どうして、長編を書くために三幕構成の基本から学ばなければならないか?」を言っておかないといけない。そりゃぼくも、「○○のシーンがここに配置されている構成上の根拠は~」なんて話しがいきなりできたら話が早いと思うよ。けれど、そうもいかない事情があるんだ。

この分野は、まず全体を把握して、それから部分を明確にしていくというアプローチをとる。だから、全体を把握せずに「思い付いたあのシーンをどこに入れればいいんだ!」とか「あのキャラの設定はどこで見せればいいんだ!」とやると失敗するんだ。

物語は、小説でも漫画でも映画でも、シーンからシーンへ繋がっていくことで「物語の形」を作っている。読者の目に見えるのは、この表層の部分だ。

ここはいわば、水面から見える氷山のようなもので、ぱっと見には、「物語の流れで」「話がそういう風に進んできたから」「キャラがそこまで動いて」なんて、曖昧な理由でそのシーンが書かれているように見える。でも、小さな氷の塊が水面にぷかぷか浮いているわけじゃないんだ。ぼくらの目に映るのは、氷山の一角でしかない。

水面下には、船から見える氷山よりも、はるかに大きな塊、理論、根拠が存在している。それらが、一つ一つのシーンを支えて、つながりをもたせて、物語の形でぼくらの目に入っている。

水面下の氷山を明らかにする手法

一つ一つのシーンに、「その場所に描かれている理由」があり、「その場所に配置された根拠」がある。水面下に隠れてしまって見えていないだけでね。あなたもうっすら、「上手く説明できないけど、何かある気がする」と感じたことはあるんじゃないだろうか?

ただ目を皿のようにして氷山を見るばかりでは、水面下の様子をうかがいを知ることはできない。けれど、然るべき知識があれば、それは目で見て確認できるようになる。

この山の一番下、土台になっている部分から徐々に積み上げていくと、山頂が水面から顔を出す。この顔を出した部分こそ、「次に何を書けばいいか」であり、「どこに、何を書けばいいか」なんだ。

三幕構成はそのやり方を、創作の曖昧な部分を抜きにして教えてくれる。学校の勉強のようにね。センスとか文才とか、そういう曖昧なものは入り込まない。理論立てて物語を構成し、大好きなキャラクターを思う存分描く空間を用意し、納得いく形で完成させられるようになる。

だからまず、その土台の存在と、そこにどんな理論があるのか見てみよう。

土台の存在を知らなければ積み上げることはできないし、積み上げることができなければ、山頂が水面から顔を出すことはない。どこに何を書けばいいかわからなくなり、長編はまた、雲を掴むような存在に逆戻りしてしまう。

ここでやる内容は今後、三幕構成を学んでいく上で(つまり、長編を書いていく上で)、すべてのベースになってくる部分だ。ここの理解が曖昧だと、今後の何もかもがズレてくる。

実はこの氷山はちょっと曲者で、頂点に近づくほど、具体性が上がっていく。つまり、土台を作っている段階では、「本当にこんなのが役に立つの?」と思われかねない、「中々ピンとこない話」を、どうしてもしなきゃいけなくなる。

けれど絶対に必要になる話だから、どうかついてきてほしい。

このステップでは主に、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』と『マトリックス』をサンプルに話を進める。だから、一度視聴しておいてもらえると、イメージも湧きやすいよ。ベストなのはサンプルの映画をその都度観てもらうことなんだけど、最低限この2本は観ておいてほしいな。

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