2-4.問1「X㎝の定規を4分割したときの値を、整数のみで表せ」

以下の数式を整数のみで表せ X÷4= BASICステップ

さてクエスチョン。タイトル通りの質問だ。

問1

X㎝の定規を4分割したときの値を、整数のみで表せ。

つまり、1/4Xを、Xを使わずに整数のみで表せってこと。こんなこと、できると思う? 無理なんだ。

でも、オープニングとエンディングをハッキリさせないまま物語を構成するっていうのは、これに挑戦する行為だ。つまり無謀ってこと。今回は、プロットポイントよりも重要度の高い要素、オープニングとエンディングの話をするよ。

プロットポイントが機能するための「ある前提」

前回プロットポイントについて話したわけだけれど、勘のいいい人は違和感を覚えたかもしれない。

「お前、プロットポイントの話をするとき、エンディングが決まっている体で、話を進めてなかった?」

『マトリックス』にしても、『名探偵コナン』にしても、プロットポイントを決めるとき、エンディングをアテにして、プロットポイントを決めてなかったか? と。

その通りだ。エンディングを基準にして、プロットポイントⅠ・Ⅱを決めている。これはぼくが勝手にそうしているわけじゃなくて、プロットポイントというものがそもそも、エンディングありきで決定されるものなんだ。

どこに行くか決まってないのに、どこで右折すればいいかなんてわかんないよね。

物語の本題がプロットポイントⅠだけど、エンディングが決まっていないのに、物語の本題がどこかなんてわからない。エンディングに向かって方向転換するシーンがプロットポイントⅡである以上、エンディングが決まってないと始まらない。

エンディングに向かって物語が進む以上、エンディングがどんなシーンか知っていないと、必要なシーンも不要なシーンもどこに何を書けばいいかも、あらゆることが決められないんだ。

自分が思いついた物語、キャラクター、アイデア、シーン、そういうものたちから、どういうエンディングになるのか、必ず知っておかないといけない。彼ら(彼女ら)は最終的にどうなるのか、どんなラストシーンを迎えるか知っておくのが、三幕構成によって物語を構成する上では必須となる。

少なくともぼくらのような書き手にとって、エンディングは絶対に決めておくべきものだ。でないと構成は機能しない。思いついたキャラクターとアイデアを好きなら、そのキャラクターやアイデアに対して「きちんとエンディングを知り、完成に責任を持てるようにする」という形で誠実になろう。

構成におけるオープニングとエンディングの役割

さっきの話の続きをしよう。1/4Xを、整数のみで表すことはできない。何故なら、何を1/4すればいいかわからないから。

Xの値が100だったら、話は簡単だ。100÷4を整数のみで表すことは、小学生でもできる。だけど、X÷4を整数のみで表すことは、東京の偉い学者先生(つまり阿部寛)にもできない。

ここで、3つの幕の比率をおさらいしよう。

■三幕の比率のイメージ

第二幕の50%はとりあえず忘れてもらって(これもゆくゆくは25%になる)、第一幕と第三幕の25%に注目してほしい。25%、つまり1/4だ。

この境目に来るのは何だった? そう、プロットポイントⅠ、Ⅱだ。

別に、この比率を厳守する必要はない。比率は物語に依る。実際、『アナと雪の女王』とかは、第三幕の比率が極端に少なくなっているしね。

ここで知っておいてほしいのは、「プロットポイントとは、全体を部分に分割する点でしかない」ということ。X÷4で考えた時、プロットポイントⅠ、Ⅱはこの4の部分でしかないんだ。全体であるXが判明していないと、「で、何を4分割するんですか?」となってしまって、手も足も出ない。

この全体であるXを決定するのが、エンディングとオープニングなんだ。

定規を思い浮かべてほしい。始まりであるオープニングが0㎝の目盛り、終わりであるエンディングが100㎝の目盛り。これで全体の長さが決まったよね。100÷4は? 25だ!

オープニングとエンディングを決めておかないと、理論立てて物語を構成することはできない。Xの値を明確にしないまま書き始めるというのは、物語の具体性を自分で見えなくする行為だ。

仮に「25!」と見切り発車したところで、後からXの値が150だと分かったら、全てがズレていってしまう。全部やり直しだ。

100㎝の定規があるとして、そこに点を打っていくのが三幕構成だ。だからまず、定規の全体の長さを100㎝だと知る必要があるんだ。

オープニングが0㎝地点、エンディングが100㎝地点。あなたの物語の100㎝地点がどんなシーンで、0㎝地点がどんなシーンか知って、ようやく分割を始めることができる。

エンディングとオープニングが決まっていないと、プロットポイントを機能させることができない。プロットポイントはあくまで全体を部分に分割する目印でしかなくて、全体ありきの概念なんだ。

ぼくがエンディングとオープニングの重要性がプロットポイントより上って言ったのは、こういうこと。エンディングとオープニングが決まっていないと、プロットポイントⅠ、Ⅱは機能しない。

単に「物語にはエンディングとオープニングがあります」なんて言っても、「そんなの当たり前じゃん」で済まされちゃうからね。だから前回は先に、プロットポイントの話をさせてもらったってわけ。

すごく大事な機能があるプロットポイントだけど、ちゃんと機能させるには、エンディングとオープニングが必要だ。この2点を決めておくことは、見た目以上に大きな意味がある。

エンディングとオープニング、この2点の空間が、全体の長さを決定する。これが構成上の役割だ。

『エンディング』の定義

さて、重要性について語ったところで、具体的な定義について述べておこう。と言っても、言葉の通りなんだけどね(言葉の通りだからこそ、その重要性が中々実感しづらい困りものでもあるのだけれど)。

まずは『エンディング』から。構成におけるエンディングとは、ラストシーンのことだ。エンディングという単語は一般的だけれど、ぼくがエンディングという場合、それはこの、用語としてのエンディングだと思ってほしい。

物語の最後に描かれるシーンであり、ラストシーンの後は、読者に対して何も見せない。正真正銘、最後のシーンだ。ここに向かって、物語は進行していく。

ただし、スタッフロールの後にやるオマケ映像は別カウントとする。あれはあくまでオマケであり、物語の終着点になるシーンとはまた別のものだ。例えば『トリック劇場版』の最後の映像は、厳密にいえば矢部と石原が糸伏村に取り残されるシーンだ。けど、ここに向かって物語が動いているわけじゃないからね。

『マトリックス』なら、「サングラスをかけ、飛び立つネオ」。『ダークナイト』なら、「ゴードンに『ダークナイトだ』と評される」。こうこんな感じに、一言でラストシーンを表す。ちなみにそのシーンをどんな一言で表すかは、各人の好みでOKだ。

ちなみに、パラダイムに長文を書き連ねるのは辞めておいた方がいい。パラダイムに長文を書くと、後で自分の首を絞めることになる。1つのシーンを、ビシッとシンプルに嵌めよう。これは、プロットポイントやオープニングでも同様だ。

『オープニング』の定義

『オープニング』の定義も、一緒に説明しておこう。といっても、エンディングとあまり変わらない。物語の最初のシーン、一文目から始まるシーンのことを、オープニングと呼ぶ。シンプルなスタートラインだ。

『マトリックス』なら「コードが流れている中の通話」とか「盗聴された通信」、『ダークナイト』なら、「ピエロの銀行強盗」という具合。小説だとよく「冒頭」って言われるシーンが、該当する。ここも、一言でシンプルに表そう。

「冒頭」とか、「プロローグ」という言葉は、基本的に使わない。ただでさえ曖昧な部分が多い、創作に関する話なんだ。用語くらい共通認識の取れているものを使わないと、もっとわからなくなってしまう。こういう部分から、創作のふわふわした部分もはっきりさせておこう。

「エンディングを決めずに書き始めることで良い作品ができる」……?

物語の結末は登場人物が決める、って言説をたまに見かける。これに関しては、まあ、本人がそれで書けるなら、どっちでもいいと思うよ。本人がそれでいいって言ってるんだから、外野がとやかく言う話じゃない。

もしかして長編が苦手なあなた自身も、「終わりが決まっている物語なんてつまらない」と思っているかもしれない。

ただ、ちょっと考えてみてほしいのが、「じゃあ、その根拠は何? なぜ終わりが決まっているというだけで、あなたの物語がつまらなくなるの?」ということだ。

読者としてなら、結末がわかっているせいで、興が削がれるということもあると思う。けど、あなたは作者だ。一緒くたにしてはいけない。

無準備のままの執筆は苦しいが、確かに、強烈にハイになれる瞬間がある。あの時の全能感ったらないし、予想外の方向に登場人物が動き始めた時、創作の神秘を感じずにはいられない。それはぼくにもわかるよ。なんてったってぼく自身、ちょっと前までそっち側だったし、今でも根っこの部分はそっち側なんだから。

けど、以前も話したように、自分の大好きな物語を文章にしているその瞬間、何のひらめきも訪れないと思う? 思い描いていた最高の瞬間を今まさに文章にしている時に、自分が無感動な自動書記マシーンになってしまうと、本当に思う? あの「最高にハイ」ってヤツが、ただエンディングを決めただけでなくなってしまうと? 予想外のひらめきがあったらトライしてみて、上手くいかなかったら戻すだけじゃないか。

あなたは自分の物語の完成に、自分で責任を持たないといけない。それは自分が書く物語について、ちゃんと知り、完成させられるように監視するってことだ。

完成してもしなくても、それは自分自身から出た結果だ。だけど、単にハイになりたいがためにその責任を放棄するっていうのは、あまりにも勿体ないと思うよ。

テーブルに詰みあがっていく賭け金は、あなたが友達と遊べた時間であり、お気に入りのアニメを観れた時間であり、毎日見たくもない上司の顔をみて、吐きそうになりながら作った執筆時間だ。雑に扱うには重すぎる。

自分の話で申し訳ないけれど、エンディングを決めていても同じようにハイになれたし、心配しなくていいよ。むしろ、早く沢山書ける分、もっと気分が良かったくらいだ。

だからせめて、正しい方法で実際にその道を歩いてから、「本当にエンディングを決めておくことが物語にとってマイナスになるか」を判断してみてほしいというのが、ぼくの気持ちだ。

現実問題、ぼくらは長編が書けずに困ったわけだしさ。「私はエンディングを決めずに書き始める」っていう人も沢山いると思うけれど、同じようにいかないことはあるよ。逆にそういう人も、「キャラクターが苦手だ」とか、「アイデアを出すのが苦手だ」って悩みがあるかもしれない。それに比べたら、やるべきことがはっきりしているぼくらの方が、ずっと幸運だ。

ぼくらにはぼくらのアプローチがある。そのためにも、怖がらずにオープニングとエンディングをしっかり決めてから、構成に移ろう。

次は、プロットポイントⅠ・Ⅱとは別の、序盤の要について紹介するよ。「冒頭を書いてしばらくすると、急に書けなくなる」って悩みを持っている人には必見の内容だ。是非見てね!

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