2.2「ここには何を書けばいいのか?」を知る方法

ADVANCEステップ

さて、最重要の要素がここで紹介する新しい概念、『サブコンテクスト』だ。

これこそが「どこに、なにを書くか」の正体であり、これを知るために、パラダイムを書く階段を一歩づつ上ってきた。

これを知れば、所謂「繋ぎのシーンに何を書けばいいか?」や、「書きたいシーンをどこに配置すればいいか?」が、ストレートにわかるようになる。どこに何を書けばいいか、一気に視界が開けるよ。

今回はそんな『サブコンテクスト』について学んでいこう。

「どこに、何が書いてあるか?」

『サブコンテクスト』と言うが、そもそも、コンテクストとは文脈のことだ。つまり、サブの文脈だ。邦訳に則り、サブ文脈とは言わない。文脈とサブコンテクストは区別する。

文脈、メインコンテクストとは、ここの部分を指す。

■『マトリックス』のメインコンテクスト(文脈)

対して、サブコンテクストはここの部分を指す。

■『マトリックス』のサブコンテクスト

第二幕を前半と後半に分割したときにできた、第二幕のもう一段階詳しい姿。それがサブコンテクストというわけ。

「状況設定・葛藤・解決」という日本語的意味の文脈の中にあるのが、作品ごとに設定される個別の文脈で、その詳細がサブコンテクストにあたる。

文脈という大きな括りのなかに「状況設定・葛藤・解決」という括りがあり、その中に、作品ごとの「その幕で何をやるのか」があり、その中にさらに、サブコンテクストが入っている。

「第二幕では葛藤をやりましょう」と言われても、何をすればいいかわからない。それは、「葛藤」という言葉の抽象性が高いからだ。

「葛藤」って言葉は、抽象的だからこそ、いろんなものを表す。だから、普遍的な創作の話をするとき、漏れなくカバーができる。具体的なほどカバーする範囲は狭くなるし、抽象的なほど、広くなる。けれどその分、「葛藤を書きましょう」だけではわかりづらい。

これを、個々の物語ごとに具体的に落とし込む必要があるんだ。「この物語にとっての状況設定とは、何についてのシーンの集まりなのだろう?」という具合うにね。

例えば『マトリックス』の場合、状況設定という大きなまとまりの中に、「トーマス・アンダーソンに迫る危機」が含まれていて、葛藤という大きなまとまりの中に、「気乗りしないヒーロー」が含まれている。これで一歩わかりやすくなった。

では、気乗りしないヒーローの姿をもう一歩具体的にすると、何についての話をすることになるんだろう? こういう考え方が、サブコンテクストだ。

「ここからここまでは、何についてのシーンの集まりか?」と質問する

そしてこの考え方こそ、「どこに、何を書くか」の正体でもある。

基本のパラダイムに立ち戻って、これを見てほしい。

■『マトリックス』の文脈

文脈が示しているのは、その幕が、「何についてのシーンの集まりか」ということである。

第一幕はネオの身に危険が迫ったきっかけ、エージェントに先手を打ったトリニティのネオへの接触、実際に訪れた危険に、どう対応していくのかが描かれている。

第二幕は「言われるから、ヒーローをやる」、「言われたから、ヒーローじゃない」という、気乗りしないヒーローの姿に関連したシーンが描かれている。

第三幕は、ネオが自分を信じ始めたら、何ができるようになるかが描かれている。ネオが自分を信じれば、完全武装されたビルを正面突破することも、弾丸を避けることも、エージェントを倒すことだってできる。

文脈の内容に関連したシーンが描かれているということは、書くべきことは文脈に関連したシーンである、ということだ。文脈によって、個々のシーンがまとまりをもつ。

『マトリックス』の第二幕に何を書けばいいのか。「気乗りしないヒーロー」の姿を描けばいいのだ。

これが、『葛藤』の次に大きな文脈だ。これを細分化して、具体化していくことによって、さらに細かく、「どこに、何を書くのか」を知っていくことができる。

■『マトリックス』で、文脈がおしえてくれるもの

「何を書けばいいのか?」この質問の答えは、文脈に書いてある。「どこに書けばいいのか」は、矢印の範囲だ。

「どこに、何を書けば完成するの?」

自分の物語にこう尋ねるとき、パラダイムを書き、文脈を確認する。そうすると、あなたの物語の文脈が「ここからここまでの範囲は、○○に関連したシーンを書いてください」と、教えてくれるんだ。

ただし、これはまだ文脈がもつ力の一部に過ぎない。文脈の考え方そのものは、BASICステップでも扱ったしね。ここはADVANCEステップなんだから、文脈だって当然進化するよ。

一歩踏み込んだのがサブコンテクスト

サブコンテクストは、文脈の中にある「もう一つの内容」だと、先ほど説明した。

「地球人」の中に「日本人」があり、「日本人」の中に「東京人」がある。「東京人」の中に、「○○区に住んでいる人」がいて、「○○マンションに住んでる人」がいて……。こんな風に、大きな括りの中には、中くらいの括りと、小さなくくりが入っている。

『マトリックス』のミッドポイントは、ネオが預言者に会うために、マトリックスへ侵入するシーンだ。

予言者と会話したことで、ネオが自分で自分のことを信じられない、周りに言われてヒーローをやっているだけだと示される。力をつけはしたが、いざ白黒つくとなると不安だ。自分は本当に救世主なのか?

これをきっかけに、ネオが救世主であることを予言者に否定(この時のネオの視点からすればそうだ)されていく。マトリックスに侵入した時から、物語の流れが完全に変化しているのがうっすらわかるだろうか?

「気乗りしないヒーローが本当の自分に目覚める」という内容の第二幕は、ミッドポイントによってこういう風に分割されている。

■『マトリックス』のサブコンテクスト

「言われるがままヒーローをやるネオの姿」、「ヒーローとしての自分を信じられなくなったネオの姿」だ。『第二幕前半』と『第二幕後半』で、書くものが別れている。この切り替えはミッドポイントの「預言者に会うため、マトリックスに侵入する」のシーンによって行われている。異なる文脈をつなぐ点、新しいプロットポイントだ。

ミッドポイントによって2つに分かれた第二幕は、「気乗りしないヒーローが本当の自分に目覚める」のどんな姿を書けばいいか、一段階、具体的に教えてくれたのがわかるだろうか?

第二幕の前半では、「言われるがままヒーローをやるネオの姿」、第二幕の後半では「ヒーローとしての自分を信じられなくなったネオの姿」を書けばいいのだ(もっと雑にイメージするなら、現実の世界/マトリックスの世界と第二幕を分割してもいい。書きたいシーンがある場合、そのシーンがどっちの世界で起こっているかでも割り振り可能だ)。

ネオがマトリックスから解放されて、本当の自分を知っていくステップの第一段階として、今まで自分が眠りの世界にいたことを知っていく。しかし、それだけでは本当の自分に目覚めたことにはならない。今はまだ、流されているだけだ。

ミッドポイントを経てプロットポイントⅡに至り、ようやく選択するのだ。主体性のなかったヒーローは、第三幕で本当のヒーローになる。

「よし、『気乗りしないヒーローの姿』を書こう」よりも一段階、具体的になった。これで、「どこに、何を書くか」が一歩前進したんだ。

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