1.1ADVANCEステップへようこそ!

ADVANCEステップ

ADVANCEステップ=細分化のステップ

ここからは、BASICで扱った内容をさらに発展させていく。けどなぜ、パラダイムを発展させなければならないのか?

それは、あのままでは全体から部分、「どこに、何を書くべきか」を具体化していく上での、手がかりが少ないからだ。手がかりが少ないと、シーンを書いている間に迷子になってしまう。

その手掛かりが、どこまで具体的なら書けるようになるのか? その必要ラインは、人によって異なる。パラダイム無しで書ける、自由気ままに筆の動くまま書いて、洗練した作品を一発書きで作れる人は、その極致だろう。基本のパラダイムだけで書ける人もいれば、そうでない人もいる。

プロットポイントⅠで殺人事件が起こったとして、プロットポイントⅡで犯人を確信する手がかりを見つける。けど、「じゃあ、あとはよろしく」と言われても、困る人だっている。手掛かりは沢山あったほうがいいし、自動で原稿を書いてくれたら最高だ。

自分の物語にどんな質問をすれば、「ああ、この物語はね、ここに○○なシーンを書いて、ここに○○のシーンを書くんだよ。え?  そのシーンに行くまでの繋ぎがわからない? それはね……」と答えてくれるのだろうか? それをこれから、発展形のパラダイムを使って探っていくんだ。

端的に言ってしまえば、パラダイムを細分化すればするほど、「どこに、何を書くのか」が、場所、内容ともに、実際のシーンに近づく。オープニングからエンディングまでを割り算したのが三つの幕、それを割っていくと、そのうち、一番小さい、割り切れない単位、シーンになっていく。

だから、より具体的にパラダイムを知っていく必要があるってわけ。

第一幕と第三幕は、パラダイムが変わっていないって?大丈夫。後に扱う、「カンニング編」で、どこに何を書くのか、ずるい指標も紹介する。それに、これからやる考え方は、あらゆる部分に応用できるんだ。だから、まずはパラダイムからだ。

パラダイムを発展させると、書くのが早くなる

パラダイムを発展させると、執筆速度は速くなる。

何故なら、パラダイムは発展すればするほど具体的になり、自身の物語について、知っていれば知っているほど、「机に向かっているのに、手が動いてない時間」が減るからだ。

机に向かって、まず最初に、昨日の続きを書く。よし、書き終わった。「さて、次は何を書こうか。ええっと、どんなシーンがいいかな……。」

これが、書くのが遅いそもそも原因なのだ。同時に、「今日は2時間も机に向かったのに、800字しか書けなかった……」の原因でもある。

机に向かっていた時間のうち、手が動いていたのはどれくらいだろう?

好きな映像作品や漫画作品を、文章に起こしてみるとわかる。お手本があって、キャラが何を言うか、どんなアクションするか、明確に決まったサンプルだ。自分の物語を形にするときよりも、かなり早い。

何故なら、何を書くか明確にわかっている分、シーンを一つ書き終わって「次は何を書こうか、ううむ」と悩む時間がないのだ。

文章の言葉選びに困ることはあるかもしれないが、書く内容がそもそも決まっていないのに比べれば、悩む時間は段違いに少ない。別に、ささっと書いてしまって、文章そのものを、後で直したっていいのだ。沢山書けるほうが、書くことそのものを好きになれる。

言葉選びに悩んでいるのが悪路を走るようなものなら、何を書くかわかっていないのは行き止まりだ。悪路は快適さに妥協すれば進むことができるが、行き止まりは、別の道を見つけない限り、身動きが取れない。そのくらい、事態の悪さにも差がある。

極論、書くことが明確に決まっていれば、あとは物理的なタイピング速度の話にしかならないのだ。「次に何を書こうか」と考えている時間、手が止まっている時間がなく、常に指が動いているというのは、そういうことだ。

勿論、機械的にタイプするなんて味気ないことをするわけじゃないし、書いている最中、物語はどんどん面白く、キャラクターはどんどん、新しい台詞を言ってくれる。そういう時、10秒や30秒、時には1分だって、止まることはあるだろう。

それは、物語をあるがままの形で文章にするために必要なことだ。ここで言いたいのは「無から有を生み出すのは大変だから、そこはあらかじめやっておこう」ってこと。

書きながら考えて、無から有を生み出すのは大変だ。今後のことを考えながら目の前の原稿に取り組むより、目の前の原稿に全力で取り掛かれた方が、気分はいいし筆だって乗る。決めておくべきことを決めておくからこそ、かえって自由を得られるのだ。有が好き勝手動き回る分には、好きにさせてやろう。

そしてそのためには、次にどんなシーンを書くか、「どこに、何を書くか」をあらかじめ、明確に知っている必要がある。反対にそこさえ知っていれば、執筆速度は爆発的に上昇する。内容が決まっていれば、手は動き続けるのだ。文章を生産するには、考える時間を減らして、文章を生産する時間に変えればいい。

この「どこに、何を書くか」を、シーン単位で知っていくための足掛かりとして使っていくのが、発展形のパラダイムというわけ。完成はもちろんさせられるし、執筆速度だって上がる。これはうれしい特典だよね。

細分化すればするほど、どこに何を書けばいいか、簡単にわかるようになる。どこに何を書けばいいか明確にわかっていると、完成もするし、執筆速度も上がる。パラダイムを発展させるのは、いいことがたくさんあるんだ。

発展形のパラダイムを書くのに必要な新要素

発展形のパラダイムで扱う新出用語は、『ミッドポイント』、『サブコンテクスト』、『ピンチ』の3つだ。順を追って解説しよう。

少ないように思えるかもしれないが、BASICステップで言ったことを思い出してほしい。この分野は基礎ほど抽象的で、応用ほど具体的になっていくのだ。基礎に化学反応を加えれば、目的地に一気に近づく。

氷山の例えと同じだ。基礎を堅めさえしてしまえば、あとはひたすら、具体的になっていくばかり。ここを超えれば、書きたいシーンや繋ぎのシーンを見つける方法まで、そう遠くはない。

■たった3つの要素が、氷山を水面から見えるところまで引き上げる

発展形のパラダイムで扱うこの3つの要素。これらはたった4つの要素から成り立っていたパラダイムを、「どんなシーンをどこに書けばいいか」を教えてくれるところまで、具体性を引き上げてくれる。

加速度的に具体性が上がっていくから、楽しみにしていてね。それでは、順番に見ていこう!

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