頭の隅に置いておいてほしいこと
ここまでかなり具体的に「物語の○○%の場所に○○を書く」という話をしてきたけれど、そのパーセンテージは、脚本におけるパーセンテージであって、完成した映画の尺と必ずしもイコールにならないことを、留意しておいてほしい。
脚本は脚本家が書くもので、映画は、脚本をもとに映画監督が撮るものだ。映像化していく中でシーンが伸びたり、縮んだり、カットされたりする。実際、脚本と映画を照らし合わせてみると、明らかにカットされているシーンがあったりするよ。
例えば『チャイナタウン』では映像化の際、BS2における『テーマの提示』がカットされている。反対に増えるパターンもあって、『オデッセイ』の脚本は121ページだけれど、再生時間は、スタッフロール抜きで135分ある。1ページ1分の目安に当てはめると、14分のオーバーだ。
こういうことがあるから、実際の映画を観て分析する際は、比率はあくまで参考にする程度にとどめて、比率に縛られ過ぎないように気を付けてほしい。元の脚本がパーセンテージ通りに書かれていても、映像化の際に変更されていることがある。
流通している映画は、必ずしも脚本の内容が保たれたまま映像になったわけではない。だから、必ずしも厳密にパーセンテージが守られているわけではないということを、頭の隅に置いておくのも大切なんだ。
そうすれば数字の奴隷になることなく、柔軟な視点を持てて、分析も、それに伴う勉強もやりやすくなる。
BASICなカンニングのおわりに
BS2を学び、ぼんやりと浮かんでいたシーンへのラベル張りが、さらにやりやすくなった。文脈やサブコンテクストの境目は見やすくなったし、三幕構成をBS2の面から考えて、理解を深めることもできるようになった。
BS2というテンプレートは要するに、期待させ、応え、苦境を超えて解決する、この流れを明確にしたものだ。三幕構成よりも一段階、具体的にね。けれど、世の中で言われる「物語のテンプレート」に比べると、まだ幾分か抽象的だ。多くの人がそれに気づいていないが、あなたはこの存在を知っている。
次回はBS2とパラダイムを使って更なる応用をしていくから、楽しみにしていてね。ぼくがよく使う、「質問1つでパラダイムを書く」というテクニックについても話すよ。
今回は、まったく新しい概念を一気に詰め込んだ。急かしはしないから、ゆっくりと咀嚼して、消化してみてほしい。