3.5第二幕の最初にすべきこと

CUNNINGステップ

第二幕で最初に書くべきことがある。

それは、『ドラマ上の欲求』の変化だ。ドラマ上の欲求というのは、人物が物語の中で得ようとしているもののことだ。別居中の妻と仲直りする、浮気調査、子供との不仲を解消する、失踪した弟を探す……。

これらはどれも、インサイティング・インシデントによって示された、人物の目的だ。第二幕の最初にすべきことは、ここが変化したことを、見せることだ。

『名探偵コナン』とか、明確にそうだよね。旅行を楽しむという目的が、殺人犯が誰か探るという目的に変化する。これをきちんと読者、ひいてはあなた自身に見せてあげないといけない。

第二幕では、第一幕までとは違ったものを追い求めることになるのだ。インサイティング・インシデントで提示した行き先とは別の、プロットポイントⅠで提示された目的へと、主人公の欲求が変化する。ここをなんとなくやってしまうと、主人公が物語についてこれなくなってしまう。

だって、『ダイ・ハード』で、いまいちテロリストと戦うのに乗り気じゃなかったら、あんなに頑張って戦わないでしょ? そもそもあのビルには、奥さんと仲直りするためにやってきたんだから。推理モノでもそうだ。警察が来てくれるんなら、素人が頑張って推理する必要なんてない。

『ダイ・ハード』のように当初の目的から地続きになっている物もあれば、コナンのように、完全に切り替わってしまうこともある。この差に大きな意味はない。大切なのは、追いかけるものが変化したことによって、物語が前進したことにある。そして、それを主人公がきちんと自覚していることにある。

これからテロリストと非番の警官が戦う物語を書きたいっていうのに、当の本人が「俺はテロリストなんか放っておいて、嫁さんと仲直りしたいんだこんちくしょう」なんて言ってたら、嫌がる彼を無理やり動かして、操り人形にするしかなくなってしまう。

物語の方向が変わったとき、主人公の目的も自ずと変化する。それを改めて示して、物語の方向と主人公の意思が合致していることを確認するんだ。これは読者に対してもそうだし、何より、作者自身が主人公の行動に納得するために役立つ。

主人公の追いかけるものが変わるとき、文脈やサブコンテクストが切り替わる。そうやって、物語は次の段階へ進むのだ。