三幕構成で、文脈という考え方を学んだよね。文脈に沿ったものを、書き、文脈に沿わないものを書かない。一番大きなものが『状況設定・葛藤・解決』であり、パラダイム上の点を打つことによって、サブコンテクストへと分割されていく。
BS2はこの、「どこの空間にどんなことを書けばいいのか?」を、強力にサポートしてくれる。三幕構成とBS2を合わせて使い、「ここに何を書けばいいのか?」を、より具体的にできるようになろう。
三幕構成+BS2
『状況設定・葛藤。解決』は普遍的な文脈だが、サブコンテクストは作品ごとに設定されているものだ。この2つの間には開きがあり、「状況設定・葛藤・解決の文脈の次は、すぐに作品ごとの個別のサブコンテクストを探そう」では、とっかかりが少ない。不足しているシーンを補充しようとするとき、サブコンテクスト以外にも、もう少し具体的な指針が欲しくなる。
そういったとき、二者の中間にBS2を当てはめて思考すると、一気に視界が開ける。
■BS2を三幕構成に当てはめる
例えば、第二幕前半に何を書けばいいのか、わからなくなってしまったとする。そんなときは、読者の期待する、『お楽しみ』に当てはまるシーンを考えればいい。第二幕前半は、少し横道に逸れたり、楽しいシーンを書いていい場所だ。
脇役のエピソードに尺を割きたいんだけれど、どこに入れるか迷った。そんなときは、『サブプロット』の場所に入れればいい。ここで脇役の描写に尺を割いていいのは、『アナと雪の女王』や、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』にかかった製作費が証明している。
主人公がひどい目に遭うなら第二幕後半、深刻なほどプロットポイントⅡに近い。仲間割れならミッドポイント過ぎてすぐだし、それが深刻な場合、『すべてを失って』に分類されて、もう少し後ろにずれるかも。
「状況設定を終えた後の楽しいシーンは、どこに配置すればいいの?」
こういうざっくりした質問にも、今ならこう答えられる。
「第二幕前半です。何故なら、第二幕前半は、楽しいことを書く(書いていい)セクションだからです。本筋から少し外れそうなら第二幕が始まってすぐ、本筋に関わるほどミッドポイントに近い場所に配置してください」
これで分類完了である。
BS2によるシーンの分類から逆算する形で、パラダイム上に振り割ることが可能になるのだ。BS2と三幕構成の合わせ技で、シーンの割り振りがしやすくなる。
そして、『お楽しみ』と『すべてを失って』の場所に注目してもらいたい。物語全体から見たとき、ミッドポイントを挟んで、同じくらいの尺を使っているのがわかるだろう。
発展形のパラダイムを作った時に使った、ミッドポイントを挟んでいるもの……、そう、ピンチである。
『お楽しみ』の中心となる出来事と『すべてを失って』は、三幕構成のパラダイム上、ピンチⅠ、Ⅱに当たるパターンが多いのだ。
プロットポイントⅠを経て、『サブプロット』をやる。そのあと、ピンチⅠ、つまり『お楽しみ』をやっていると、ミッドポイントに到達する。楽しいことが始まって、一歩前進した成果がピンチⅠだ。次のステップ、もっと良い方向に物語が動いてゆく。
するとミッドポイントで第二幕の文脈が分割されて、今度は悪いことばかりが起き始める。ピンチⅡ、『すべてを失って』に向かって事態はどんどん悪くなり続ける。そこまでの過程が『迫りくる悪い奴ら』で、『心の暗闇』を経て、プロットポイントⅡへと到達する。
随分と具体的になったよね。ピンチによって第二幕を細かく分割できるようになったから、BS2を、パラダイムにそのまま当てはめることが可能になったんだ。サブコンテクストのとっかかりが欲しい時、パラダイムの下にある、BS2を確認してみればいい。「シーンが足りない! どんなシーンを思い付けばいいんだ!」こんな時、あなたの物語における、BS2に対応したシーンを、補充してやればいい。
「シーンが足りない! シーンが足りない! 思いつかない!」これだけでは、あなたの物語はうんともすんとも応えてくれない。もっと具体的に質問をしてやる必要があるんだ。
その際、サブコンテクストに対応したシーンを聞くのが基本だ。けれどプラスして「なぁ、『お楽しみ』のシーンが足りないんだけど、読者って、どんなシーンをこの物語に求めてると思う?」とか、「この物語でいう『迫りくる悪い奴ら』って、どんなシーンだと思う?」とか、「『迫りくる悪い奴ら』で状況が悪くなるんだけれど、『すべてを失って』に繋がるくらいの出来事ってどれ? そこがピンチⅡだと思うんだけど」とか、こういう聞き方を知っておくとアプローチが増やせる。パラダイムがぐっと書きやすくなるし、シーンを考える時も簡単になるんだ。
創作界隈ではテンプレの是非について定期的に話題になるが、BS2の凶悪さ、強烈さに比べれば、ほほえましいものだ。大体の物語は、こういう形になっている。
ここからは、発展形のパラダイムにBS2を組み合わせて、各要素を見ていこう。