1.1WRITINGステップのはじめに

WRITINGステップ

ああ、長かった!

下準備に次ぐ下準備、そしてそれに伴う勉強!習得してしまえば、温めていた物語のパラダイムを書き、カードを書くのに、そう時間はかからない。パラダイムはしっかりできているし、カード書きについては、一週間もあれば終えてしまえる。未知の概念を学ぶのに時間はかかったかもしれないが、制作そのものは、良いテンポを保てていると思う。

ようやくあなたに、パソコンに向かわせることができる!

前回、優勢と勝利は違うと話をしたね。どこに何を書くべきか知っていることと、作品が完成することはイコールにならない。

ゲームと似ているね。対戦相手を終始圧倒することと、そのまま押し切って勝利することは、イコールにならない。ゲームには勝ちか負けかしかなくて、小説にも、完結か未完結かのどちらかしかない。

一度でも完結すれば後はどうにでも変更できるが、未完結の物語はどこまで行っても未完結だ。決着はまだついていない。優勢を勝利に変えて、初めて勝利だ。

カードを書き終わっていよいよ、執筆にとりかかる。もうこれで、バタ臭い文章でハリウッド映画を勧められることも、図面の引き方がおかしいなんて横槍が入ることもない。そして同時に、横槍を入れてやることもできなくなる。

何週間、数か月と執筆作業に移った時、あなたは物語を文章に出力していく上での問題と、もう一つ、別の厄介な問題に直面する。

書くという作業は、究極的には一人でやるしかない。あなたの物語を完成させるのは、カードでもパラダイムでもなく、あなたが机に向かって、文章を書き続ける時間だ。

あなたは一人ではないし、ぼくがついている。困ったら相談に乗るし、困ってなくても、進捗をいちいち聞くだろう。困った時だけでなく、元気のない時に活を入れることだってできる。

けれど、ぼくがハートマン軍曹のようにあなたに罵倒を浴びせたとしても、あなたがその気にならなければ、あなたを机に向かわせることはできない。書くという行為は、最後はあなた一人がやるしかないのだ。

あなたは数か月間、原稿に取り組むことになる。十万字を超える文章を生産するのに避けることができない、必要な時間だ。

その中であなたはトラブルに対処し、モチベーションを維持していく必要がある。

時間は有限で、あなたは小説だけ書いていればいいという生活をしている訳でもないだろう(『メイン・イン・ブラック』や『チャーリーズ・エンジェル』を書いた脚本家、エド・ソロモンですら、「脚本を書き終えた後に起こることは、すべて嫌いだ!」と言っている。本業の人間ですらこうなのだ)。あなたを疲れさせることは山のようにあり、時間は常に足りない。

そんな中、明日も職場でキレずに済むように、ストレス解消もしたくなるだろう。その手段はゲームであったり、漫画であったり、スポーツであったりするだろう。そうやって他のことに時間を使っていく中で、社会人となった書き手は書かなくなっていくのだ。

トラブルへの対処も大事だが、モチベーション管理も、同じくらい大事だ。モチベーションさえ管理できれば、トラブルに取り組める。取り組めば、解決に向かう。机に向かわない限り、何も始まらない。

ぼく自身、ここにたどり着くまでに、「あー、書けない……」となったことは、何度もあった。すわスランプかと思ったが、じゃあ自分でどんな対処をしたかというと、「あー、どうしよ……」と思いながら、YouTubeを見ていただけである。

夜になって原稿のファイルを開くと……、おかしい! 原稿が進んでいない! わかってはいたが、机に向かわなかったのだ(なんて人間的ですこと!)。

どうやって解決したかというと、嫌々、机に向かっただけである。書くことが決まっているのに、そもそも解決する問題なんてないのだ。結局、嫌々でも書いて、あとから納得いくように直すしかなかったのである。

ぼくはこんな感じだ。こんな感じだが、ここまで書いてこれたし、同じように他の原稿も書いてきた。あなたも同じように、「書いているときは最高に楽しいし、たとえトラブルに遭遇しても、やる気が出なくても、なんだかんだ言って、最後は最高に楽しくて納得のいくものが作れる書き手」に、なることができる。

これらは、単なる根性論じゃないよ。ちゃんとしたが根拠あって、「嫌々でも書く」という解決策を選んでいる。こう言われると、興味も湧くんじゃないかな?

このステップで学ぶのは、執筆中のトラブルへの対処法についてだ。執筆中のトラブルと、不安への対処。特に後者が強敵だ。

あなたの執筆を一日たりとも止まらせないために、ここからは今まで引き合いに出さなかった分野からも例を挙げていくよ。

シンプルな過程に潜む「最も怖いもの」

執筆作業の手順は、非常に単純だ。カードを確認しながらオープニングから順に、エンディングに向かって書いていく。それだけである。

■執筆作業そのものはスタンダード

ただし、オープニングからエンディングまで、10万字を超える文章を書く中、何かしらのトラブルに遭遇することはある。

執筆中に最も気をつけるべきは、立ち止まってしまう事だ。

執筆でちょっと詰まったからといって、「ううむ、ここはどうしよう」と、その場で考え込んでしまうと、泥沼に嵌る。運動エネルギーと同じだ。動いている物を動かし続けるより、止まったものを一から動かす方が、はるかに多くのエネルギーが要る。2時間悩み、1日悩み、3日悩み、7日悩み、書かなくなり、最後には書けなくなる。

これを回避するための対処法というのは、ちゃんとある。反対に対処を間違えると、あなたはこの怪物の即死攻撃を受け、倒れてしまう可能性があるのだ。

厄介なのは、執筆の段階でいいのを一発貰うと、自分自身で作業をストップさせてしまいやすいことだ。

ここでのストップというのは、「ヤバイ!どうしよう!」という、ネガティブなトラブルだけが原因ではない。

「やったあ! 新しいシーンを思い付いたぞ! どこに入れよう!」という、素晴らしいひらめきすら、扱いを間違えると、執筆を止める原因になりかねない。停滞が続いたら、同じように最悪の事態が待っている。

その原因が何であれ、執筆の手が止まってしまうことは、非常に良くない。執筆中に起こるこういった現象の対処法と、不安そのものへの対処法について話そう。

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