1.2どういう状態の原稿が「推敲された原稿」なのか?

REWRITEステップ

しかし、推敲とは実際、どうやってやればいいのだろうか?

これについて、シド・フィールドは、3つのレポートを書くことを勧めている。ぼくが最終的に薦めたいやり方とは少し異なるけれど、彼のやり方がベースとなっている。まずは、それを紹介しよう。

まずフィールドによると、原稿には3つの段階があるという。「一つ目は、ただ文字を書いただけの稿、二つ目は『機械的な』稿、そして3つ目は推敲された稿である」と。

■フィ―ルドの、原稿の3つの段階

まず初稿、「ただ文字を書いただけの稿」を書き終えた後、1週間ほど置く。そして、メモなどを何も取らず、最初から最後まで一気に読む。良く書けているところ、そうでないところ、色々あって、読んでいる最中に気分が上下する。フィールドは「それは良い傾向だ」と、その状態を評している。

それから、『3つのレポート』を書き始める。

1つ目は、「どういう脚本を書きたかったのか」という事を見直すレポートで、量は2~3ページ程度。自分が興味を引かれた発端、魅力的に感じたのは、人物だったのか、状況設定だったのか、アクションシーンだったのか、何に一番心を惹かれたのかを書く。

2つ目は、「では出来上がったものはどんなものになったか」というレポートだ。

ぼくには今のところ経験がないが(あなたがそうであっても、気にすることはない。以前も話したが、ぼくの物書きのとしてのパラメーターは極端だ。代わりに、苦手なところでは手も足も出ない)、フィールドも、生徒を指導しているときに「最初に念頭に置いて書き始めたものと、出来上がったものが全く別物になっているということはよくある」と言っている。

その生徒は当初、日雇い労働者と上流階級の女性の関係についての物語だったのだが、出来上がったものは、女性をめぐる、労働者とその弟の関係の物語になったそうだ。この2つ目のレポートも、量は2~3ページあれば十分だという。

3つ目は、2つのレポートの溝を埋めるために何をするべきか、というレポートだ。

つまり、「出来上がった物語を、書きたかった物語に寄り近づけるために何をすればいいのか」についてまとめていく。ストーリーのどこに変更を加え、情報を補填し、強化していくかということについてだ。

もし、当初書きたかった物語と出来上がった物語が違っていても、あなたがそれに満足しているのなら、それはOKだ。変化することは、悪いことではない。

そしてフィールドはこれら3つのレポートをもとに、「物語を機能させるために必要な要項を満たすための『機械的な』直し」と、「質を向上させ寄り理想に近づける、ブラッシュアップの直し」という2つのステップを踏んで、推敲を行っていく。これがフィールドの言う推敲の流れだ。

フィールドは推敲の際、こういう手順で書きたかったものと出来上がったものをくらべて、どうすれば2つを一致させられるか修正を加える箇所を探していく。

つまりフィールドの言う推敲とは、「書き上げた物語を、自分の書きたかったものに近づける」ことを目的としているわけだ。

この考え方は、ぼくも非常に気に入っている。「作品を良くするためにやる」じゃ、漠然としすぎている。これなら、何をすればいいかまではっきりわかる。

要は、「なーんか違うんだよなぁ」と感じる場所を見つけ、それを直す方法を考えればいい。リストアップしたものを直し終われば、「推敲した」ことになるわけだ。

「作品を良くするために」、なんてよくわからないふわふわした理由で、小細工のように部品を付け替えたり、シーンを追加する必要はない。

「作品を良くする」の「良く」とは何か?

ここを自身でわかっていない限り、それは中身のないものを追いかけるのと同じだ。あなたが書きたかったものが形になっていることが「良い」状態である、ときちんと定義して追いかけよう(作品を誰かに見せて、指摘を受けたとき、「たしかにそうだ」とか、「一理あるかもしれない」と思ったら、それもあなたがそう思った以上、その指摘を受け入れたものが「良い」状態と言えるだろう)。

直しとは、何かを追い求めるからこそ起こるのだ。追いかけるものもないのに原稿に手を加えても、仕方がないのである。

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