3-3.あなたが書くシーンは、2種類に分けられる

「どこに何を書くか」を知るために パラダイムを使う BASICステップ

さて、前回は主にプロットポイントがどこかという部分に焦点を置き、その説明を重点的に行った。しかし、それらをぼくらが実作に生かすには、ここからどう学べばいいのだろうか? 今日は、その部分について確認してこう。

昨日はパラダイム上の重要な要素を見ていったけれど、ここで前提をひっくり返すよ。

オープニング、エンディング、プロットポイントⅠ・Ⅱは、物語上の重要な要素だ。だけど、シーンについて考える上で重要になるのは、もう一歩先の部分になる。

せっかく書けるようになったパラダイムだ。実作に活かす使い方を見ていこう。

あなたが書くシーンは大別して2種類

もしかして、不思議に思っている人もいるんじゃないだろうか? エンディング、オープニング、プロットポイントⅠ・Ⅱ。たったこれだけの要素について長々と重要そうに語っているのは、なぜだろうか?

シーンについて考える際に知りたいのは、プロットポイントなどの点ではなく「その間の空間」だ。なぜかというと、この「点と点の間」こそ、「どこに何を書くか」や、「どこに、何を書けばいいのか」を知る最高の道具だからだ。

■『美女と野獣』のパラダイム

あなたがもし『美女と野獣』を書きたいとして、最初から思いついているシーンがいくつもあると思う。

二人の関係が深まり、デートするシーン。アニメイト・オブジェクトとなった家臣たちとベル。呪いが解けるシーン。ベルが利発で進歩的な考えを持っていることを表すために、牛を使って洗濯機を作ったことや、シークレットのアレ。色々だ。

物語を書こうとしたとき、あなたが書こうとするシーンは、2種類に分けられる。一つは、あなたが「元々考えていたシーン」。もう一つは、「必要に応じて考えたシーン」だ。この二つは、どちらも厄介な課題を抱えている。

「元々考えていたシーン」を書くのは、誰でも楽しい。主人公が動き回り、敵役は強く魅力的で、ヒロインはかわいい。小ネタだってある。最高だ! けれど、それはそのシーンまでの道のりが書ければの話だ。

「元々考えていたシーン」を書くには、「そのシーンを配置する物語上の場所」と「そこに至るまでに必要なシーンが何か」を知る必要がある。そして、それらが書ける必要がある。

特に、「書きたいシーンがあるのに、なぜか入れる場所がなくて……」とか、「書きたいシーンがあるのに、そこまでたどり着けなくて……」というのは、これらをわかっていない典型だ。

曖昧なまま初めて、ちょっとした小石に躓く。入れる場所や辿りつく方法が思いつかず、半日、三日、一週間……、解決方法が思いつかなければ、そこでおしまいになってしまう。未完結フォルダの名前は、もう見たくないだろ?

「もうマジ最高イカしてる書きたいシーン」があなたの中にあるとして、物語はそのシーンだけでできているわけではない。オープニングからエンディングの間のどこかにそのシーンを配置し、他のシーンを経て到達する必要がある。「元々書きたかったシーンを適切に配置」し、「必要に応じて補ったシーンをプラス」しないといけないわけだ。

  1. 元々思いついていたシーンをどこに配置するか?
  2. どんなシーンで、思いついていたシーンと思いついていたシーンの間を補えばいいのか?

非常に大雑把な括りではあるが、現段階でもこの2つについて知ることができる。例を挙げてみよう。

このイメージ図を見てほしい。

■最初は一つの大きなバケツの中に、思いついたシーンたちがまとめて入っている

あなたの頭の中には書きたい物語の概要と無数のシーンがあって、一つの巨大なバケツの中に入っている。それらは液体のようにひと塊になっていて、混沌としている。

それをこんな風に、パラダイムの上にのせて、ひっくり返すんだ。

■ザババーッ!

大きな一つのバケツから3つの小さなバケツに、シーンが割り振られた!

第一幕、第二幕、第三幕。おおブッダ、ケオスの渦から生まれしシーンたちに、秩序が生まれたではないか! パラダイムに従い、自動的にそれらのシーンが三幕のどこに該当するか振り分けられた!

割り振りの境界線になるのがプロットポイントⅠ・Ⅱであり、「このシーンは第一幕と第二幕と第三幕、どこに属するのだろう?」という疑問に、一発で応えることが可能だ。

「そのシーンは、プロットポイントⅠよりも前? それとも後? プロットポイントⅡよりも前? 後?」これを聞くだけで、対応する幕に割り振ることができる。

今まで真なる混沌の中にあったシーンたちが、明確な根拠を持って割り振られた。これが「書きたかったシーンをどこに書くか?」を知る一歩目だ。

シーンを考えるのに大切なのは「空間」

「随分ざっくりしているなぁ」と、思った人もいるだろうね。けど、この考え方が最終的に、シーン単位で配置する場所を決めることを可能にしてくれる。

シーンについて考える際、使用するのはプロットポイントそのものではなく、そこから生まれる空間なんだ。プロットポイントは思考のための基礎データに過ぎない(反対に、ここがズレるとすべてがズレるから、基礎が大事なんだ。間違ったデータから生み出された分析ほど、アテにならないものはない)。

例えばあなたが「夕食の準備をするアニメイト・オブジェクトの家臣たちとベル」のシーンが書きたいとする。

これは、オープニングや他のシーンを考えるよりも前にあった、あなたが元々考えていたシーンだ。これをプロットポイントⅠをベースに、書くべき場所を考えてみる。


■ シーンが配置される場所を探そう

まず時系列として、このシーンを描けるのはベルが野獣に囚われた後だ。で、もう一つの時系列上の制約として、二人の仲はこの段階では最悪だ。ベルはこの腹ごしらえのあと、城を出ていく。もっと厳密にいうと、この食事のあとに城を出て行ったところを野獣に助けられ、そこから仲が深まっていくわけだから、野獣との仲が深まる前に、家臣たちとのシーンが入る。

これらを条件として、「夕食の準備をするアニメイト・オブジェクトの家臣たちとベル」のシーンの場所を判別してみよう。

条件1:これはプロットポイントⅠ以降に配置されるシーンである。何故なら、ベルが囚われるという状況が必要だからである。

条件2:二人の仲が深まるのは、ベルが逃げ出した時に狼に襲われたのを、野獣が助けたのがきっかけである。よって、野獣との仲が深まる前にしか発生しない。

条件3:これはベルが城を逃げ出す前のシーンである。なぜなら、今書こうとしているのは、ベルが野獣の城から逃げ出すための腹ごしらえのシーンでもあるからだ。

パッと思いつくだけでもこれだけの条件がある。これらすべてを満たそうとすると、実は候補になる場所はほとんどない(この制限は、むしろ歓迎すべきものだ。創作の「自由にやっていい」は、「何をすればいいかわからず途方に暮れる」ことと紙一重なんだから)。

大体真ん中くらいでベルが狼に襲われ、野獣がそれを助ける。ここから二人の関係は好転していくから、「ベルが囚われて城を逃げ出すまでの範囲」のどこかしかない。

プロットポイントⅠ以降、物語の真ん中よりも前、かつ、ベルが新生活に慣れる前で野獣との生活が始まって間もないころ。配置場所は、ほとんど決まったようなものだ。

■実は配置場所は限られる

ベルが囚われた後で、野獣が狼からベルを助ける前。物語をよくよく見ると、そもそも配置できる場所はこの範囲にしかないんだ。とあるシーンよりも前か、後か、その時系列上の制約は何か? それは他のあるシーンよりも前か後か? これだけの条件でもかなりのシーン、割り振りが可能だ。

映像にして約30分、『プロットカード』と一般的に呼ばれているカードでシーンをカウントする場合、12~14枚程度である。この範囲の中からさらに、他のシーンとの兼ね合いを考慮していく。すると候補は、ほんの数か所に絞ることができる。

この場合、家臣たちと初めて会うシーンや、ベルが野獣に囚われて最初に塔からの脱出を計ろうとするシーンは、ほぼ場所が決まっている。

ベルが囚われたことを表し、その中でも家臣たちの思惑があることを見せておく。そんな家臣たちとの顔合わせのシーンが必要だ(もっと言うなら、ベル家臣たちとの顔合わせは、家臣たちがベルに夕食を準備する前でないといけないという、時系列上の条件がある)。となると、少なくともこれ以降でなければならない。

かといって、ベルが呪いのタイムリミットを示す薔薇を詮索し、野獣に吠えられ、城から出ていくシーンまで行ってしまうと、そのままベルは狼に襲われ、野獣は彼女を助けてしまう。するとそのまま、野獣との仲を発展させるのに忙しくなる。となると、シーンを前後させる余地があるのは、ガストンが酒場で踊るシーン周辺くらいだろう。

整理してみるとそもそも、この酒場のシーンの直前か直後くらいしか、このシーンを配置できる場所がないんだ。

■物語をよーく見ると、選択肢は自ずと絞れてくる

また反対に、「就職の準備をするアニメイト・オブジェクトの家臣たちとベル」のシーンの場所が初めに決まっていれば、それ以前、以後という二択で、他のシーンをどこに配置すればいいかもわかるようになる。書く内容というのは、こうやって整理していくんだ。

明確な基準があり、それをベースに割り振りを行える。これはとても安心できて、頼りになる指標だ。小さな一歩目でしかないけれど、物語を視覚化し、混沌の中にあったシーンを、一定の具体性を持った場所に割り振ることができたね。

次は「足りないシーンの補い方」

まあ、ここまではまだ、釈迦に説法の範囲かもね。素敵なシーンを思い付き、その配置場所を決める。これはまだ、楽しい範囲の話だろう。

では、足りないシーンはどう補えばいいのか?

あなたが執筆を始める前に考えていなかったシーンたち、必要に応じて適宜追加していくシーンたちだ。多くの人がここを知りたいんじゃないかな。

正直、今の段階で「目の覚めるような」気づきをストレートに与えるのは難しい。ここの具体性を上げるには、もう100ページほど必要だ。

だが、その第一段階目には触れておこう。パラダイムから必要なシーンを割り出し、「どんなシーンについて考え、思いつけばいいか」についてだ。

書きながら思いつけばいいけれど、1週間、2週間ときて、1か月経つ頃にはお蔵入りするか、掲載を中断する理由を見つけるほうが建設的に思えてくるだろう。

けれどこれを防ぐ方法はハッキリ存在していて、基礎の段階からでもその片鱗を見ることができる。明日はここについて解説するよ。

長くなってしまったから、今回はひとまずここまで! 扱った内容を映画本編とよーく見比べてみてほしい。パラダイムを書き、今回の内容をそのまま、自分の手で辿ってみてほしい。

「テキストを読むだけ」、「映画本編とテキストを見比べる」、「映画本編とテキストを見比べてから、実際に自分でやってみる」では、経験値の入り方が違う。

というか、テキストを読むだけではほぼ経験値が入らないと思ったほうがいい。厳密にいえばあなたは、長編の書き方を知りたいのではなく、長編を完成させる力を身に着けたいはずだ。ならば実際にやってみないと、そこに経験値は入らない。だから是非、やってみてほしい。

それでは明日は「足りないシーンの補い方」についてやっていくよ。それでは、また次回!

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