1-3.ぼくらにとっての「構成」とは、「どこに、何を書くか」を知ること

ゴールは56枚の カード BASICステップ

「構成」っていうのはまったく、よくわからない言葉だよね。「構成が良い」、「構成が悪い」って聞くけれど「じゃあ構成ってなんだよ!?」って話だ。あなたは構成について学んでいくわけだけれど、あなたは一体何を学んでいくのだろうか? その中身を見ていこう。

「どこに、何を書くかを知る」ことが全てのカギ

構成とは何か? と聞かれたとき、ぼくは2つの回答を持っている。一つはぼく自身が構成を学んでいく中で得た知見、「構成とは、点と空間である」というもの(これはまた、適切なタイミングが来たら話そう)。もう一つが、「どこに、何を書くかを知る」ことだ。

どこに、何を書くか。これさえわかれば、長編なんて怖くない。どこに何を書けばいいかわかっているということは、次に何を書けばいいか、明確になっているということだ。あるシーンを書いて、次のシーンを書く。そしてまた次のシーンを書く。繰り返しているうちにほら、長編が完成した!

三幕構成を理論化した本家、脚本家のシド・フィールドは言った。「何を書くか知ることが、最も難しい」と。いくらか話してきたように、「次に何を書けばいいかわからない」という状態こそ、長編が書けない原因なんだ。反対に言えば、ここさえ何とかすれば、どうにでもなるってこと。

ここの原因を潰さないといつまでたっても長編は完成しないし、この先もずっと、「1シーン書くたびにコインを投げて、裏が出たら未完結」くらい分の悪いギャンブルをしながら書き続ける羽目になる(実際書けなくなる確率はフィフティ・フィフティではないけれど、賭け金がこれまでの執筆時間全てであることを考えると、このくらい分が悪いと思ったほうがいい)。

あなたがこの先、構成のことについて勉強していく。それはつまり、「自身の作品について1冊分の、『どこに、何を書けばいいか』を知る方法を身に着ける」だと解釈してほしい。

俺のデッキは56枚(イェア!)

長編小説の完成という最終地点に向かって、「どこに、何を書くかを知る」という、執筆の前の準備という形でアプローチしていく。では、何をどこまでやれば「準備完了!」と言えるのだろうか? それを話しておかなくちゃいけない。

下準備のゴールは「56枚のカードを書き終わったとき」だ。大体、単行本一冊分、2時間映画一本分のシーンが、この56枚に入る。

ここでいうカードっていうのは、所謂「プロットカード」とか「ハコガキ」と呼ばれるアレだ。シーンの内容を書いたメモだね。

こいつを56枚書いた段階で、執筆のゴーサインが出る。あとは机に向かうだけで、長編小説は完成だ。ま、この56枚をちゃんと書けるようになるまでに、やることが多いんだけどね。

あなたもこれまで一回くらいは、プロットカードを書いたことがあるんじゃないかな?

そしてぼくらのようなタイプにとって、「プロットカードを書いたはずなのに途中で書けなくなった」までがワンセットだ。下手すると、最後までカードを書き切ることも怪しいだろう。

この原因は単純で、カードを書く前に本来しておくべき準備を、何もしていなかったからだ。

紙とペンを用意して、順番に書いていく。思いつく限りのシーンを書いて、「ヨシ、準備完了!」。今だから言えるけど、これじゃ途中で書けなくなるのも無理はない。だって、プロットカードを書き始める前にやらなきゃいけない工程が、ごそっと抜けているんだから。

プロットカードは確かに、個々のシーンを管理するのに非常に有効な道具だ。けれど本当なら、個々のシーンを管理する前にやっておくべきことが沢山あるんだ。

とりあえず今の段階では、「自分の作品について、どこに、何を書くかを知る方法を知っていく。最終的に、56枚のカードを作る。そのために必要な勉強をしていく」と覚えておいてほしい。

カードを書く前に、本来やっておくべきことがある

で、さっきも言ったみたいに、56枚のカードを書くまでにしなきゃいけないことが、びっくりするくらい沢山ある。厳密には、しなきゃいけないことは少ないんだけど、きちんと実行できるように必要な知識が、結構多い。

56枚のカードを順番に書いていくだけでは、まあ、十中八九失敗する。それに事実、あなたも失敗してきたと思う。ぼくもしてきた。

原稿を書く指針は、確かにカードだ。それはもう、めちゃんこ正しい。けど、カードを書く指針は持ってる?

冒頭から順番にカードを書いていったとして、途中で詰まったことはないだろうか? 詰まった部分を飛ばして次のカードを足していったとき、後からそこを補うことができただろうか? よくよく見るとカード間がスカスカだったり、実は全然カードが足りなかったり、実際書き始めたら全然カード通りにいかなくて、キレそうになったことはないだろうか?

何の指標も無しにカードを書いたところで、事故って書けなくなるだけだ。仮にカードが書けても、実作のときに事故る。何故ならぼくらのような感覚的に長編を書けない書き手にとって、「カードを抜け漏れなくちゃんとプロットカードを書く」ことは、とても難しいから。

けど幸運なことに、この点については体系化された手法によって、丸っと解決することができる。アイデアが思いつかない、キャラクターがわからないといった作者の内面の悩みに比べれば、コトは遥かに簡単だ。前者はしゅほうを使えばどうにでもできる。後者は作者自身がその答えを見つけない限り、誰にもどうにもできない。

BASICステップでは、この56枚のカードを書く前の段階、「長編を完成させるために絶対に必要な4つの要素」について紹介していくよ。