ここはもう、いつもの消去法だ。第一幕は状況設定で多忙、第三幕は解決のために多忙、第二幕後半はマジな話に引き戻された物語の舵取りで多忙。だから、結果的に第二幕前半に、すべて押し付けることになる。
BS2における、『サブプロット』や、『お楽しみ』にあたる部分だね。
第二幕前半の中核である『お楽しみ』は、読者が楽しみにしている部分で、作品の感想を大きく左右する部分でもある。が、「オープニングで始まった物語を、エンディングまで運ぶ」という点から見たとき、その貢献度は他ほど高くない。
ミッドポイントに到達さえすれば結構自由の利く第二幕前半に比べて、第一幕は情報の塊だ。第二幕後半も、プロットポイントⅡに向かうため、消化しておくべきものがたくさんある。第三幕は今まで未解決だった問題を一手に引き受けるから、横道に逸れる暇はない。
だから必然的に、横道に逸れるのは第二幕前半でやることになる。
例えば、『エイリアン2』の、クルーの紹介シーン。エイリアンに襲われたという星を調査する物語とはいえ、少し横道に逸れているよね。プロットポイントⅠからピンチⅠまでの空間を、丸っと彼らと宇宙船の紹介に充てているから、その量はかなりのものだ。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』もそうだね。新しい仲間との関係の構築に、プロットポイントⅠからピンチⅠまでの空間が丸っと使われている。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』はベンの情報によって物語が前に進むし、『エイリアン2』は、第二幕の世界、新しい世界の登場人物とルールの説明に尺を使っている。
本当になんの関係もない話を始めるのはまずいけれど、少々横道に逸れるくらいのことは、許してくれているんだ。
それが恋愛であったり、後から思いがけないヒントをくれるサブキャラだったり、筋肉モリモリマッチョマンのアンドロイドとの友情だったりする。
物語の本筋とは離れるけれど、あれば確実に物語を面白くしてくれる。そんな要素は確かにあるんだ。
その内容が、「もし、○○が○○だったら?」に一切関係なく、物語を前に進めることもなく、その上、第二幕の世界の説明もしておらず、新しい人物も出てこないというのなら、それはほんとうに無関係なシーンという事になる。こういう時初めて、「物語にそぐわない」とカットされる。
まあでも、どうしても入れたいのなら、それを止める必要はないから大丈夫。書きたい物語を書くためにあなたは構成を学んでいるのだし、言語化できている「そのシーンを入れる理由」がないだけで、実は物語に深く関連しているのかもしれない。そして、BS2は絶対のルールではない。
指針として、第二幕前半に入れるのが上手くいきやすいが、それは「物語の本筋からちょっと離れるんだけれど入れたい。けど、どこに入れればいいかわからない」というときに使う。そんな予備のコンパスであって、メインはあなたがそれをどこに書きたいかどうかだ。
カーナビがなんと言おうと、あなたが近道をわかっていて、それで目的地にたどり着けるのなら、その方がいいに決まっている。書きたい場所が他にあるのなら、そこに書けば大丈夫だ。あくまで、「困った時向けの指針」であることを、留意してね。