2.2「もし、ジョジョが奇妙な冒険だったら?」

A&Cステップ

荒木飛呂彦の漫画、『ジョジョの奇妙な冒険』は、能力バトルものだ(第三部からだって?まぁまぁ、細かい話は置いておこうよ)。敵スタンド使いとの戦いを通して、設定された目的に向かって行動していく。

この作品は、「もし、○○が○○だったら」を、とても効果的に使っている。

荒木飛呂彦がホラー繋がりでキングの言葉を知っているのか、それは定かではないけれど、キングのやり方を知っていてもおかしくないし、作品が実際、そのやり方で作られているように思う。

例としてまず、第三部、『恋人(ラバーズ)』のスタンド使い、スティーリー・ダンとの闘いを挙げよう。

ダンのスタンド能力、ラバーズは、自身の力では、髪の毛一本も動かすことができない、小さく、非力な能力である。ただし、「本体とスタンドが離れるほどパワーが落ちる」というスタンド能力のルールにより、ラバーズは他のスタンドにはない長大な射程距離を得ている。

ラバーズはその小ささを活かして承太郎の祖父、ジョセフの体内に入り込み、ジョセフの脳を人質とした。圧倒的なパワーとスピードを誇る承太郎のスタンド、スタープラチナも、ジョセフを人質に取られてしまえば、なすすべはない。普通のスタンドであれば射程距離の外まで逃げることで解決するが、ラバーズはそのパワーのなさ故、かえって何百キロもの射程距離があるのだ。

殴られ、蹴られ、橋にされ、盗みをやらされ、承太郎は一切の抵抗ができず、ダンに痛めつけられる。仲間たちがラバーズを除去しようと試みるも、上手いようににいかない。そんな状態で、ラバーズは「フッッフッフ」と不敵に笑って言う。

「史上最弱が……………、最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も恐ろしいィィ、マギィ―――――――――ッ!!」

最弱であることの利点、強みを活かした恐ろしい相手であり、「もし、承太郎たちが、最弱のスタンドと戦ったとしたら?」の答えが、VSラバーズなんだ。

最弱だから力はない。最弱だから小さい。けれど射程距離は長い。もしそれが、仲間の脳に入り込んだら? それが承太郎の祖父であるジョセフだったら?そんな時、承太郎はどうする? ジョセフはどうする?仲間たちは、それをどうやって切り抜ける? そして切り抜けた先、承太郎はその敵をどうしてやる?

仮定して、それに応える。これが面白さや興味を生んでいるのがわかるだろう。

この作品には様々なスタンドが登場するが、そのどれもが、「○○が○○だったら?」を、設定して、物語の中で応えてくれる。

  • ハングドマン……もし、ポルナレフの仇敵が、光のスタンド使いだったら?
  • バステト女神……もし、条件を満たした人間を、磁石にすることができるスタンド使いがいたとしたら?
  • チープ・トリック……もし、岸辺露伴が、背中を見られてはいけないスタンドの攻撃を受けてしまったとしたら?
  • ハイウェイ・スター……もし、時速60キロ以下に減速できない状況で、スタンド使い本体を見つけて攻撃するしかなくなったら?
  • ノトーリアス・B.I.G……もし、本体の死後も消えない不死のスタンドと、飛行機の中で戦うことになったら?

スタンドそのものであったり、それによるシチュエーションが物語を作っていく。シチュエーションとスタンドの合わせ技で、列車プラス、ザ・グレイトフル・デッド&ビーチ・ボーイとかもあるね。

仮定の話だけど、「ザ・グレイトフル・デッドVSビーチ・ボーイ」とかでもいいんだ。もし、ペッシとプロシュート兄貴が、直接戦ったとしたら?

結構有名な考察で、「ペッシのスタンド『ビーチ・ボーイ』は実は、ブチャラティチームと暗殺チーム、ほぼ全員に対して有利が取れる」というのがある。『メタリカ』のようなタイプには探知能力と中距離からの一撃必殺で、『スティッキー・フィンガーズ』のような近距離タイプには遠距離からの搦め手で封殺できる。

ペッシの精神面の弱さで本来の力を出せていないだけで、ポテンシャルはかなり高かったりするのだ。兄貴がペッシのことを「その気になりゃあ誰にも負けねぇ」と激励したのは、本当なのである。

反面、プロシュート兄貴の『ザ・グレイトフル・デッド』は、実は探知系の能力が刺さったり、近接戦闘力は並(老化させる能力にパワーを使っている)という欠点がある。本編ではそこをうまく補って戦ったわけだが、実は正面切ってペッシと戦った場合、兄貴に勝ち目はないのだ。プロシュート兄貴は、この局面をどうやって乗り切るだろうか。

「もし、プロシュート兄貴とペッシが戦ったら、何が起こるか?」。ね、楽しそうでしょ?

こういう形で、「もし、○○が○○だったら?」で考えることは、読者の興味を引いて、楽しんでもらうことにも、多大な貢献をしてくれるんだ。

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