物語を構成するのは大変だ。パラダイムを作り、BS2を埋める。たった二つの工程をやるだけでも、ここまで何十記事も使ってきた。
大変だったね! そして良いお知らせ! ここからは楽になるし、楽の仕方を覚えるよ!
今回は、パラダイムを簡単に書けるように抜け道を知ろう。この抜け道を通れば、あれこれ難しいことを考えなくても、楽にパラダイムを書けるようになるんだ。
プラス、自分の物語の売りを書くべき場所が明らかになり、どこで読者の期待に応えればいいのかも分かる。副次効果として、作品の質もアップするよ。
楽してクオリティアップ、いいことづくめだ!
抜け道のカギは『お楽しみ』
自分の物語において、「どこに、何を書けばいいのか」を知る最も簡単なスタート地点はどこか? それは、その物語にとっての『お楽しみ』を知ることだ。
『お楽しみ』はBS2の一要素であり、パラダイム上では第二幕前半に配置される。物語の一番おいしい部分であり、お客さんは物語がどう進むか以上に、このセクションのシーンを期待している。
思い出してほしい。物語の危険度が一気に上がって真剣な話に引き戻されるのは、ミッドポイントからなのだ。『お楽しみ』の間は、楽しい状態を安心して楽しめる。
船が沈むわけでもなく、氷の魔法に命を奪われるわけでもない。救世主気分で楽しくやっていられるし、『前前前世』を流しながら、入れ替わり生活を楽しめる。
というか、そうやって頭空っぽで楽しめる場所は、ここしかないのだ。
パラダイムとBS2を、照らし合わせてみるとわかる。
第一幕は状況設定をして、第二幕では、ミッドポイントを皮切りにして、プロットポイントⅡへの梶を切っている。プロットポイントⅡからエンディングまでは、もう一直線だ。遊んでいる暇はない。
物語がエンディングに向かうきっかけはプロットポイントⅡだが、プロットポイントⅡへ向かうきっかけはミッドポイントだ。そうなるとミッドポイントの段階で、物語を畳む準備が始まっているという事になる。
恐ろしい話だが、ミッドポイントの時点で、物語を畳む準備を始めなくてはいけないんだ。
プロットポイントⅡは、エンディングに向かう直接の要因だ。そしてプロットポイントⅡには、ミッドポイントを経由する。
だからミッドポイント以後は、プロットポイントⅡへ到達するための、物語の本筋に関わる真面目な話をしていかないといけない。
こう考えると、ほんとうに恐ろしい。登場人物が楽しく好き勝手やれるのは、第二幕の前半しかないのだ。「読者の期待に応える楽しいシーン」という重責を担えるのは、第二幕前半という、ごく限られた空間しかない。
ぼくが常々言っていた、「他は他で忙しいから、ここしかそのシーンが入る場所がない」の極致が『お楽しみ』なのだ。
第一幕、第二幕後半、第三幕はどれも物語の設定や解決といった、進行に関わる部分で構成されている。それに対し第二幕前半だけは、ミッドポイントにさえ到達すればOKなスペースとなっている。
セット・ピースが入りやすい理由もここで、セット・ピースそのものが単体で完結する、あってもなくてもいい、「魅せシーン」だからこそ、物語の本筋に大きく関係しない空間に、配置されやすいのだ。
そういうわけで、敵の反撃や陰鬱な展開を心配せずに物語を楽しめるのは、この『お楽しみ』のセクション、第二幕前半でしかないわけ。
何も考えずに楽しめる、一番おいしくて一番気楽で、一番魅せシーンがある場所がここなのだ。だからこそ、『お楽しみ』を起点に物語を考えるのはとても楽しくて簡単だ。
プラス、「読者を意識しましょう」をという創作はハウツーを実行にすることにもつながる(読者が何よりも求めているのが『お楽しみ』なんだから)。いいことづくめだよ。
次回は「『お楽しみ』が物語の核になることはわかったけれど、じゃあ、どんな方法で自分の物語の『お楽しみ』を知ればいいの?」という話をしていくから、お楽しみに!