3.1『テーマ』=誰が何をするか

CUNNINGステップ

BS2の話を終えて、三幕構成とBS2を組み合わせる段階に入った。その前に、三幕構成をノーマルに使っていくカンニング・テクニックについても、いくらか触れていくよ。

まずは、『テーマ』についてだ。

世間一般で言う「物語のテーマ」は忘れろ

さて、三幕構成の話に戻ったところで、シド・フィールドの、『主題(テーマ)』の定義について話そう。

スナイダーの言う『テーマ』は、「その物語を通して得るべき教訓」、「物語の内容を暗示するような一言(またはそれを表した描写)」だった。かなり、一般で使われる用法の『テーマ』だ。

スナイダーはこれについて、明確な定義を述べていない。つまり、そういう意味でも、「一般に使われている『テーマ』という言葉の意味」が、テーマの定義となっている。

しかし、シド・フィールドは、『主題(テーマ)』について、明確な定義付けを行っている。なのでこの言葉もいっそ、再定義しておくのがいいだろう。

シド・フィールドがした『テーマ』の定義は「主題(テーマ)とは、アクション(行動)とキャラクターである」というものだ。

■主題(テーマ)=「誰が」「何をする」物語か? 

フィールドは、「主題(テーマ)とは、アクション(行動)とキャラクターを意味する。ここでのアクションとは、どんな行動に関するストーリーであるのか、キャラクターとは、誰に関するストーリーなのか、ということを指す」(Field 2005: p.30)と述べている。

また、「脚本には登場人物、場所、人物のアクションが具体的に書かれる。中心的なキャラクターが主人公であり主人公の行動がアクションである。したがって脚本の主題とはアクションとキャラクターのことであると言える」(Field 2005: p.30)とも言っている。

これだけでは難しいよね。ぼくだって、最初は意味不明だった。

「あの映画のすばらしさ」とかを語る上での『テーマ』じゃなく、書くツールとして機能させえるために『テーマ』という言葉をどうとらえればいいか。

それを端的に示すと、「誰が、何をする物語か」だ。この質問に答えるのが、シド・フィールドのいう『主題(テーマ)』である。

  • 『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』……少年少女が、街を覆う怪異と対峙する物語
  • 『ダイ・ハード』……非番の警官が、ビルを占拠したテロリストと戦う物語
  • 『マトリックス』……眠りの世界に閉じ込められていた男が、本当の自分に目覚める物語
  • 『アナと雪の女王』……姉の魔法で雪に閉ざされた国を、もとに戻す物語
  • 『タイタニック』……息の詰まる生活をしているお嬢様が、沈んだという船で自由な青年 に恋をした物語

よそ行き用に、少しおしゃれに表すとこんな感じだ。

自分用でいいならもっとラフに、こういう書き方をする。

  • 『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』……ビルたちがペニーワイズに立ち向かう話
  • 『ダイ・ハード』……ジョン・マクレーンがテロリストと戦う話
  • 『マトリックス』……ネオが本当の自分に目覚める話
  • 『アナと雪の女王』……アナがエルサの魔法を解くために冒険する話
  • 『タイタニック』……ローズがジャックに恋をする話

簡素だが、「誰が、何をする物語か」を端的に表している。これが、完成させるツールとしてのテーマだ。

『アナと雪の女王』は確かに「真実の愛」についての物語かもしれないが、「真実の愛について書くぞ!」と意気込んでも、書けるようにはならない。真実の愛は物語に解決をもたらすが、じゃあそのために、誰が、何をすればいいのかについて、一切教えてくれないんだ。

これじゃ、テーマを決めたって書けるようにはならないし、テーマは何も、書けるようにはしてくれない。

「真実の愛について書こう!」と意気込んで机に向かっても、それは書く内容を決めているのではなく、書いたもので何を表すか決めただけだ。お役立ち度から言えば、「人を感動させる物語を書きたい!」だけで机に向かうのと大差ない。

誰が何をする姿を通して、それを伝えるのか、そこまで決めていないと、机に向かっても身動きが取れないのだ。

■『アナと雪の女王』を書きたいとして、これではNG

創作クラスの先生の言っていた「まずはテーマを決めなさい」が、「まずは、誰が何をする物語かを決めなさい」だったと思えば、わかりやすさも全然違うだろう。

アナがエルサの魔法を解くために冒険するのなら、とっかかりは沢山ある。雪山に上る、その過程で新しい仲間に出会う、エルサを説得する、エルサの魔法を受ける……。どれも、映像になる。映像になるということは、シーンになるということだ。シーンになるということは、そのシーンを書けるということでもある。

テーマという言葉から、感覚的にこの定義を引き当てる人もいれば、そうでない人もいる。だから混乱を招くんだよね。

単なる「テーマを決めましょう」で書ける人は、そのテーマから芋づる式に「誰が、何をする物語か」まで引き出せる人だ。「真実の愛の物語を書こう」というスタートから、「アナがエルサの魔法を解くために冒険する物語を書こう。それは雪山に登って……」と、ここまで連想してしまえる人は、これで大丈夫。

でもそうでない場合、テーマの定義をきちんと確認して、一歩ずつ具体化していく必要があるんだ。